昔PC関連の研修を受けていた際に、「SSDはHDDに比べ長寿命である」とテキストに記載されていました。理由については特に言及されていなかったので、フラッシュメモリには書き換え可能な回数に限界があるということだけ知っていた当時の私は「絶対逆やん!」と思ったのでした。
某社ではNASも取り扱っており、HDDモデルのほうがよく売れていたので、速さのSSD、寿命のHDDくらいに当時の彼は思っていたようです。
では実際どうなのかというのが今回の内容になります。
NAND型フラッシュメモリでは絶縁体で囲われた箱に電子を出し入れすることで01を作り出すような構造をしています。
NAND型フラッシュメモリとは | KIOXIA - Japan (日本語)
絶縁体の層は電子が通過することで劣化していき、電子(データ)を保持できなくなってきます。これがいわゆる書き換え数の限界が存在する理由で、進行するとビット化けといった現象が発生するようになります。
SSDやUSBメモリといった製品では書き込み可能な総容量をテラバイトで表した、TBW(Total Byte Written)として公表されています。製造~現在までに書き込まれた総容量も同じくTBWと呼ばれます。
ということは単位時間当たり何バイト書き込むかによって寿命が変わることになります。例としてWestern Digitalのごく一般的なSSD、SA510のTBWは100~400となっています。
Product Brief: WD Blue SA510 SATA SSD (westerndigital.com)
容量の大きなSSDにはより多くのセルが使われているので、その分寿命も長くなります。
先ほどのSA510の製品保証は5年(or TBWのどちらか早いほう)となっていますが、
一日当たりの書き込み容量が
100~400TB ÷ (5 × 365) = 55GB~219GB
以下なら5年は持つということになるでしょうか。
ケースによりますが、一般用途で毎日55GB以上の書き込みを行うというのはあまり考えられないので、仮に500GBモデルのSA510に一日平均10GBのデータを書き込むとすると、TBWは200なので、55年は大丈夫という計算になります...理論上は。
ここでHDDを見てみますが、同社製の一般的なHDDで2年、データセンター向けで5年となっています。
Product Brief: WD Blue 3.5-inch HDD (westerndigital.com)
Data Sheet: Ultrastar DC HC520 (He12) (westerndigital.com)
我が家のPCに搭載された2年保証の某社製HDDは5年現役なので、あくまでも目安ではありますが一般的にSSDのほうがHHDより高寿命というのは正しいと言えそうです。
では話は変わってNASなどのパックアップ目的でHDDが主流な理由ですが、SSDはデータの保存に電力を必要とするという点が挙げられます。
HDDは磁気ディスクにデータを書き込むため電源に繋がずに放っておいても内容が消えることはありませんが、SSDは内部の電気を完全に放電してしまうとデータが消失してしまいます。
HDDの方が比較的データ復旧しやすいというのも理由かもしれません。
「ストレージの余裕は心の余裕」という言葉があります。これは容量の事ですが、SSDに関して言えば寿命的な面でも大きい方が安心できそうです。